今回は、アセッサー養成講座の「能力開発編」第5回となります。前回に引き続き、エニアグラムを元に受講者のタイプ分けを行い、自己変革・成長の方向性を説明していきます。
タイプ別、能力の特性や改善点
正解主義
- 目指すもの:正しい答えを出すこと
- こだわり:事実をもとに客観的に思考を進める
- 成果へのエネルギー:小 知識欲求が強い
正解主義の人は、「正しい答えを導く」ことを第一義に据えて仕事にコミットメントしていきます。知識欲が高く、多くの情報を得て、「正しい答え」を導きます。また、自分の役割と周囲の状況を照らし合わせながら、「正しい振る舞い」を選択します。反面、「ミスを犯すこと」「人から間違いを指摘されること」を最も嫌います。
定型業務においては、安心して仕事を任せられますが、企画業務になると、「平板」「中庸」の枠から抜け出せず、斬新なものは期待できません。また、「わからない状況」に弱く、情報不足、先行き不透明な状況では意思決定を先送りしがちです。「大胆さ」に欠けるきらいがあります。
思考パターン
正確かつ詳細な思考展開となります。情報収集は幅広く、細部にわたって状況を厳密に理解します。「ルール」「手続き」に従って思考を進め、誰から見ても「妥当である」という結論を目指します。論理的思考も磨かれ、根拠を明快に示した意思決定を行います。「情報理解」「状況判断」「論理思考」は良好です。
一方、事実から離れて自由に発想、連想、想像することは苦手です。つまり、「客観」のなかで処理しようとする傾向が強く、「主観」を打ち出すことがほとんどありません。ルールや手続きが絶対であり、自分の「感性」「感覚」で結論付けたりすることはありません。結果、言われたことを正しく進めることはできるものの、自己発意で新たな取り組みを行う姿勢は極めて弱くなっています。
対人交流パターン
感情面よりも理屈面に傾斜した対人交流となります。また、「こうしたい」「こうしよう」という主観は語らず、「こうなっている」「こうすれば解ける」といった客観的な見解が中心となります。場を主導することよりも、場を観察し、適宜「コメント」を述べる格好となります。「軌道修正」「議論深化」「別の視点提示」という役目を果たします。ただし、場を盛り上げたり、異論の調整をしたりすることは好きではありません。「人」「チーム」よりも「事実」「事柄」に興味が向かいます。
正解主義の人は、「定型業務は得意だけども企画業務は今一つ」「知らないこと、見えないものに弱い」という傾向が見られます。
正解主義の人の自己啓発のテーマは、「正解探索」から「正解創造」の姿勢の醸成にあると思います。私は、正解主義の人にこう提言します。
- 「主観」を先行させた思考展開によって企画構想力を高めてほしい。
「水面下」や「近未来」といった見えないものを見ようとする姿勢をつける
「推論」「仮説」を有効に使いながら、思考を進めていく訓練を重ねる
「こうありたい」という思い(want)をゴールに設定し、達成方法を考える - 以下のテーマをもって自己変容していこう
学者からリーダーへ:「こうなっている」といったコメントを述べるのでなく、「こうしよう」と周囲に働きかけよう
検証することよりも物語を語る:「正しい」ことを語るのでなく、「やってみる価値があること」を語ってみよう。正しいからやるのでなく、面白いからやる、業界を変えられるからやる、などと物語を語ってみよう。
感性や感覚を磨く:論理に頼らず、意思決定を行う訓練をする
安全主義
- 目指すもの:安定した状態にいること、信頼関係の中で仕事をすること
- こだわり:組織の方針、上下関係、職責と権限
- 成果へのエネルギー:大 安定欲求が強い
安全主義の人は、「安定性と継続性」を第一義に据えて仕事にコミットメントしていきます。ルールを大切にしており、ルールがあることで混乱状態から自分が守られ、「安定感のある仕事」を可能としています。ルールを守り、責任を果たすことで「信頼」を勝ち取ることに力を注ぎます。粘り強い、逆境に負けないといった強さがあります。人の気持ちを読んだり、場の空気を読んだりすることもできます。
反面、「ルールがない状態」「ルールを守らない人や組織」を最も嫌います。つまり。「信じられるもの」がないときには、自分の出処進退に戸惑ってしまいます。「変化の渦中」にあると、実力が発揮できなくなります。
思考パターン
ルールや手続きに沿った思考展開となります。コンセプト設計といった概念的な思考よりも、実効策といった具体的な思考を好みます。業務の遂行時においては、「こうすればまわりはどう動くか」「この指示で相手はわかるだろうか」といった細かな気遣い、先々の予測までしっかりと行い、成果獲得を確実なものにしていきます。
「業務の運営(how)」では力を発揮しますが、「どこに向かうか(where)」「なぜ行う必要があるか(why)」「何を行うか(what)」を考えることは得意ではありません。「自由に考えよ」「何をやるか自分で決めよ」といわれると困ってしまいます。
対人交流パターン
主体的、主導的に行動することは稀です。不確実なことを考えたり、様々な期待に応えようとしてかえって迷ってしまったりします。頼れる人や組織に依存しがちです。人と信頼関係を築くことを大切にしますが、疑いやすく、人の真意や意図を読み取ろうとしすぎるきらいがあります。一方、信頼できる仲間ができると、能動的な行動を取ることが出来るようになります。信用できるものには忠実に、そうでないものには猜疑的に接します。
安全主義の人は、ルールを守り、責任を果たすことで「信頼」を勝ち取ります。逆境でも負けないといった強さがあり、人の気持ちを読んだり、場の空気を読んだりする繊細さもあります。しかし、「ルールがないとき」「信じる人がいないとき」は、主体的な行動を取れなくなります。
安全主義の人の自己啓発のテーマは、「ルールに従う」から「ルールを作り直す」という姿勢の醸成にあると思います。私は、安全主義の人にこう提言します。
- 「自分の座標軸」で思考したり、行動したりしてほしい
ルールはあくまでも手段、状況によって変えるべきものと認識する
自分の大切にしているもの、自分のやりたいことを言葉にして書き出してみる
人との対話では、思っていること、感じていることを率直に口に出してみる
自分をセーブせず、本能や本心に従って行動してみる - 以下のテーマをもって自己変容していこう
人の期待から自分の欲求へ:「人の忖度」から「自分の心との対話」を大切にしたい
最高を求める姿勢:「リスク」「リソース」に配慮して目標を下げるのでなく、「理想形」「完成形」を大きく掲げてみる
不安の力の活用:あえて安定しない状態に身を置き、主体性を発揮しながら前に進む訓練を行う
楽観主義
- 目指すもの:楽しいことをすること
- こだわり:やりたいことをやる、本能に逆らわない
- 成果へのエネルギー:大 好奇心が強い
楽観主義の人は、「楽しいことをやる」を第一義に据えて仕事にコミットメントしていきます。「やりたいことをやる」ことを大切にしており、快楽を求めて頭も体もフルに回転します。プラス思考であり、「制限」「制約」を気にせず、喜びと快楽を求めてアイデアを次々と連発させていきます。「やりたいこと」「できること」「すべきこと」が一致したときは、素晴らしい仕事を成し遂げます。反面、自分のいやな面には向き合わず、困難・圧力からは逃避するきらいがあります。また、「衝動的」「飽きっぽい」という負の面も見られます。
思考パターン
論理性は高くないものの、感性、感覚、想像性に優れ、様々なアイデアが次々と沸いてきます。プラス思考であり、「できない理由」は考えず、「できる方法」を多方向から考えます。「新しい物好き」であり、新たな知識の獲得に積極的です。定型業務よりも企画業務に適した思考スタイルを持っています。
反面、あれこれと思考が散逸し、コンセプトやストリーにまとめ切れなくなります。論理構築が苦手なため、作成する報告書は感覚的な表現が多く、第三者からは理解しづらいものとなります。打ち出すアイデアの質的検証は後手に回ります。
対人交流パターン
興味や関心を持つと、一気呵成に起動します。流行の最先端を走ります。集団では、率先自発的な行動が特徴的であり、場を盛り立てていくムードメーカーとなります。自由かつ気ままな行動が目立ち、思ったこと、感じたことを間髪入れずに発信していきます。
しかし、場をまとめようとする使命感は足りず、「にぎやかし」で終わってしまうことも少なくありません。衝動的な行動も多く、傍から見ると、「軽挙」に感じてしまいます。
楽観主義の人は、喜びと快楽を求めてエネルギッシュに行動します。新たな価値を創造する力は十分にあります。しかし、忍耐力がなく、逆風が吹くと弱くなります。長続きしない、困難に遭遇すると逃避してしまう「負の面」も窺われます。
楽観主義の人の自己啓発のテーマは、「自分の楽しいこと」と「会社から求められていること」を一致させていく姿勢の醸成にあると思います。私は、楽観主義の人にこう提言します。
- 「自分」「仲間」「会社」という3つの視点から思考したり、行動したりしてほしい
自分の使命を大きく捉え、そのうえで「やりたいこと」「楽しいこと」を探してほしい
自分の喜びが、仲間の喜びであり、顧客の喜びとなるように、魅力あるビジョンを作ってほしい
困難に遭遇してもあきらめず、チームで一丸となって壁を突破してほしい - 以下のテーマをもって自己変容していこう
自分の楽しみから皆の楽しみへ:楽しいことを仲間と共有化してほしい
協働・共創する姿勢:自分がヒーローになるのでなく、互いの個性を十分に発揮できるチームをつくる
楽観的に構想し、悲観的な計画を作る:実行段階では、「緻密な思考」「客観的思考」「悲観的な思考」で不足事態に対応してほしい
次回に向けて
今回は、正解主義、安全主義、楽観主義の人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行いました。次回は、引き続き他のタイプの人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行っていく予定です。