今回は、アセッサー養成講座の「能力開発編」第4回となります。前回に引き続き、エニアグラムを元に受講者のタイプ分けを行い、自己変革・成長の方向性を説明していきます。

タイプ別、能力の特性や改善点

他愛主義

  • 目指すもの:人を支援し、喜ばれることで自分の存在感を味わう
  • こだわり:相手の期待に応えること、自分の犠牲にして支援すること
  • エネルギー:中

他愛主義の人は、「人から喜ばれる」を求めて仕事にコミットメントしていきます。自分のことはさておき、相手に喜んでもらうことを期待し、最大の努力を傾注していきます。一人でいるよりも、人と交流している時間を大切にします。マネジメントの特徴としては、相手に共感したり、相手の士気を高めたり、集団内の雰囲気を良好にしたり、とにかく「人や集団を良い状態」にすることができ、民主的なリーダーシップが特徴的です。反面、自分よりもまわりを優先しがちであり、「自分はこうしたい」という熱い思いは聞かれません。また、「よく考える」ことよりも「人や組織を活性化する」ことに軸足が置かれます。

思考パターン

対人面が優先されるため、思考面はあまり長期で考えることは少なく、「今、どうするか」に関心が向きがちです。したがって、現実的、短期的、調和的な思考傾向が強くなります。そして、「事実」「論理」よりも「感情」「感覚」が先行して思考を展開されがちです。日常の問題解決では、問題分析は浅いものの、直感を働かせて現実感のある解決策を案出していきます。未来に向けては、強い思いはないものの、自分なりの将来像を描いていきます。一方、理を詰めてじっくりと考えることは不得手です。時節に固執することはなく、「周囲のメンバーにとっての最適解」に向かっていきます。

対人交流パターン

社交的です。誰とでも良好な関係を作り上げることが出来ます。友好的・配慮的に周囲と交流し、メンバーの「不満」「期待」などを敏感に察知することができます。グループの雰囲気を良くすること、相手の気分を高めることに関心が向かい、自分を犠牲にしてまでも、支援的な行動を取っていきます。グループ討議では「ファシリテーター」としての役目を担い、メンバーの立場を慮りながら、メンバーの個性を引き出しながら、合意形成を導いていきます。部下を持つと、面倒見のよい上司となります。反面、相手が「喜ぶ」「感謝する」ことを期待して行動するため、そういったプラスの反応がないと、「怒り」が生じてしまうことがあります。「深く濃密に付き合う」というよりも「一定の距離を置いてメンバー平等に付き合う」交流となります。

他愛主義の人の自己変容のテーマは、「民主的なマネジメント」「支援的なマネジメント」を行う一方で、はっきりとビジョン(方向性)を示し、周囲と共有していく姿勢を陶冶していくことにあると思います。私は、他愛主義の人にこう提言します。

  1. 成果の質よりも人間関係を優先しすぎないようにしてください。
    100点の結果を目指すマネジメントに徹してください。
    民主的な討議では付加価値は生まれません。
    健全な対立や葛藤の場面を作り出してください。
    意見や価値観の対立や葛藤から「新しいもの」が生まれます。
    時には、毅然と自己主張をしてみてください。
  2. 以下のテーマをもって自己変容していこう
    「自分自身の思い、理想、価値観をはっきりと打ち出し、主体的、主導的に行動すること」
    「すべてを平等に扱うのでなく、『評価』『選別』をしていくこと」

結果主義

  • 目指すもの:何があっても必ず結果を出すこと
  • こだわり:プロセスにはこだわりはなく、結果を出すことにこだわる
  • エネルギー:大

結果主義の人は、「結果を出す」ことを第一義に据えて仕事にコミットメントしていきます。「結果を出す」ため、ありとあらゆることを行います。「やれることはすべてやる」という態度が顕著であり、「出し惜しみする」ことはありません。いかなる困難に遭遇しようとも、結果を出していくわけですから、「先の先を読む思考」「機転を利かせた行動」「今までのやり方を変更する柔軟な姿勢」が必要になります。一方、「結果」に強い意識が向く分、「プロセス」にはあまりこだわりはありません。ともすると、「結果良ければすべて良し」「結果のためなら不誠実なことでも厭わない」となりかねません。

思考パターン

「結果を出す」というゴールから逆算し、時間を無駄意にしない頭の使い方をします。

  1. すばやく全体を大きく掴む
  2. 要点ややるべきことを掴む
  3. 直感や機転を働かせながら複数の選択肢を準備する
  4. もっとも妥当性の高い解を選択する

といったプロセスを辿っていきます。思考展開は、「速い」「広い」「浅い」「近い」というスタイルとなると思います。 100点の答えは出ないものの、何が起きようと必ず70点の答えを出していきます。反面、結果を急ぐため、じっくりと立ち止まって「熟考する」「展望する」ことが苦手です。「求められる結果」を出すことに精を出すため、自分でビジョンを描くとなると惑ってしまいます。

対人交流パターン

集団状況であろうと、対話場面であろうと、意図する結論に向けて「言葉巧みに」唱導することができます。「結果を出す」ことが大切ですから、自分から率先して行動していきます。先導型・主導型のリーダーシップスタイルを取るともに、タフ・ネゴシエーターでもあります。巧みな話術で流暢に自説を展開します。想定外の反論や質問に対しても慌てず、柔軟かつ機敏に切り返し、自説の妥当性を訴求します。相手が納得しないと見極めるや、「落としどころ」の結論を探ったり、「取引」を行ったり、柔軟に自分の主張を変えていきます。結果主義の人は、巧みな対人スキルをもち、能動的に活動して意図する「結果」を手中に収めていきます。反面、人との距離は一定を保ち、深入りをしません。情実に流されません。

結果主義の人は、「結果は残すけれども、最適解に至らない」「結果を出すことに傾斜し、自分のこだわりが表れない」というきらいがあります。結果主義の人の自己啓発のテーマは、「探究心」「探求心」の醸成にあると思います。私は、結果主義の人にこう提言します。

  1. 「早急な結果」「目に見える結果」を求めるあまり、犠牲にしていることはありませんか?
    定型的な業務であれば、成果の量は増大します。
    非定型的な業務であれば、「深く考える」「独自視点から考える」ことをしていないため、成果の質は高まりません。高度成長期のエリートの仕事スタイルです。
    今後は、成果の質を高めていく取り組みが求められます。
  2. 以下のテーマをもって自己変容していこう
    「『所与の仕事をやり遂げる』から『ビジョンを描き変革を達成する』スタイルを目指す」
    「誰でもできることはやらない。自分にしかできないことをやっていく」
    「プロセスに徹底的にこだわっていく」

独自主義

  • 目指すもの:自分の存在感をしっかりと発揮すること
  • こだわり:結果よりも、自分の存在感を打ち出すことにこだわる
  • エネルギー:大

独自主義の人は、「自分の存在感を発揮する」ことを第一義に据えて仕事にコミットメントしていきます。自意識が高く、「自分が好き」な人が多いと思います。「人からどう見られるか」には特段の配意を行い、自分の行動を選択していきます。「格好いい自分」を表現することに向けて、行動面、思考面の両面において精一杯頑張るので、ユニークな発想、目立つ言動が出てきます。反面、「悪く評価されたくない」「みっともない自分を見せたくない」という意識が強く、自己防衛的な行動が多くなります。苦手な状況、弱風が吹くと、「困難から逃避する行動」が目立つようになります。

思考パターン

独自の着眼からものを見たり、独創的な発想を行ったり、とにかく「人と異なるもの」を目指します。美意識も高く、センスの良さが光ります。発想は豊かであり、「感性」「感覚」が磨かれています。事実をもとに筋道立てて考えたり、細かく精査したりする姿勢は弱く、アイデアを創出したり、イメージを広げたりしていきます。しかし、「最適解を目指す」ことよりも、「独自のものを目指す」スタイルとなるため、時に本末転倒してしまいかねません。当たり外れはあるかもしれませんが、当たれば魅力的な将来構想を描いていきます。

対人交流パターン

人から注目されることを好むため、言動は派手になります。「言葉」の使い方にもこだわり、「表現力」も豊かです。衆目を集めるパフォーマンスによって存在感を発揮します。ただし、「目立つ」「存在感を発揮する」ことに意識が向き、周囲の意見を調整したり、合意を導いたりすることには関心が向かいません。リーダーシップを発揮するというよりも、異なった視点からアイデアやイメージを提供する役目を果たします。人と対話する場面では、巧みな話術で流暢に自説を展開します。しかし、厳しい反論や答えづらい質問に対しては、防衛心が働き、「かわす」「逃げる」という行動を取りがちです。真正面から堂々と対峙するよりも、柔軟に対応によって優位な立場を保持しようとします。

独自主義の人は、「目立つことはするけれども、集団への貢献性は今一つ」「厳しい場面から逃避しがちである」という傾向が見られます。独自主義の人の自己啓発のテーマは、「自己顕示」から「自己犠牲」の姿勢の醸成にあると思います。私は、独自主義の人にこう提言します。

  1. 周囲からの「信頼獲得」に尽力することを心がける必要がある
    自分の利益を先行せず、相手の利益、集団の利益を考えた行動を意識する
    自分が目立つことにとどまらず、最高の成果を求めて最後まで手を抜かない
    特に、周囲が困っている時、「一肌脱ぐ」をいう意識で行動する
  2. 以下のテーマをもって自己変容していこう
    逃げない:何事にも逃げず、真正面から向き合っていく習慣をつけていく
    態度を変えない:状況によって、人によって態度を変えない
    内面を磨く:表層面(結果・外見)を整えるだけでなく、内面(プロセス・表に出ない部分の努力)を整える

次回に向けて

今回は、他愛主義、結果主義、独自主義の人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行いました。次回は、引き続き他のタイプの人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行っていく予定です。