今回は、アセッサー養成講座の「能力開発編」第3回となります。受講者のタイプをいくつかに分け、自己変革・成長の方向性を説明していきます。
人のタイプ分け
タイプ分けの考え方
人のタイプですが、様々な考え方があります。タイプ分けをする基準ですが、「もっとも変わりづらい基準」でタイプ分けをしたほうが合理的です。そうすると、以下のレイヤーでいうと、もっとも下層の「マインド」のレベルでタイプ分けをしたほうが、有効な活用ができます。
- スキル :思考技術、コミュニケーション技術
- スタイル:行動様式、思考様式
- マインド:価値観、こだわり、動機、意識
仕事の出来不出来は、状況によって変わります。
スキルの発揮具合も、状況によって出方が変わります。
行動や態度も、状況によって変わります。また、意図的に取り繕うことができます。
しかし、「価値観」「動機」について嘘をつくことが出来ません。
私は、人を「動機の方向」「価値観」「エネルギーの大きさ」で分けています。
動機の方向(志向性):何を目指して行動するか
当然、人は使命や目的を果たすために努力をします。ここでいう「動機の方向」とはその先にあるものを言います。誰でも成果を目指します。では、「なぜ成果を目指すのか」と問われると、「出世したい」「金を儲けたい」「褒められたい」「自己実現を図りたい」など人それぞれです。
価値観(プロセスにおけるこだわり):何にこだわって行動するか
目指すものが同じであっても、ゴールまでの道のりは人それぞれです。「人間関係を大切にする人」「自分のやり方を大切にする人」「新たな挑戦に価値を置く人」「ミスをしないように慎重に物事を進める人」など、価値観は人それぞれです。
エネルギーの大きさ:どこまでコミットメントするか
目指すものが同じであっても、こだわるところが同じであっても、エネルギー(欲求・コミットメント)によっても、行動や成果は大きく異なってきます。
繰り返しますが、人は同じ状況に遭遇しても、考えること、感じること、選択する行動は一人ひとり異なります。それは、一人ひとり、以下のものが異なるからです。
- 動機の方向:行動を引き起こす要因
- 価値観:こだわり、良し悪しの基本的基準
- エネルギーの大きさ:目指すところ、達成したと認める基準
そんな細かい部分まで峻別して見られるか、と思う人も少なくないと思います。でも、ここまで相手を理解できると、相手に対して良いアドバイスを行うことができます。「人はこんなもの」といった一般論のアドバイスはあまり役に立たないものです。
結局、ヒューマンアセスメントとは、個々人の価値観や動機の方向を掴み、それが能力にどう表れているかを解明し、「変えるべき点」「強化すべき点」を提言するのです。
人のタイプ分けでもっとも重要な基準「価値観」
その人は、何にこだわって行動するのか?
良し悪しの基準(価値観)を何に置いているのか?
動機が生じると、人は一定の成果目標に向けて行動します。ただし、行動の仕方、考え方は、人によって異なってきます。その要因は、価値観の違いです。つまり、こだわるところが各人で異なる、「良い悪いの基準」、「好き嫌いの基準」が各人で異なるからです。人の価値観は無数にあるといえますが、「エニアグラム」では以下のように、9つにタイプ分類をしています。その人のこだわりによって、性格特性が定まってきます。
タイプ1 完璧主義:完全でありたい人、道徳的、理想主義者、公正で正直、頑固一徹
タイプ2 他愛主義:人の助けになりたい人、情愛深い、面倒見が良い、心が広い
タイプ3 結果主義:成功を追い求める人、自信たっぷり、精力的、自力で物事を進める
タイプ4 独自主義:特別な存在への欲求、表現力が豊か、独創的、内省的、
タイプ5 正解主義:知識を得て観察、分析的、粘り強い、鋭敏、自制心がある、客観的
タイプ6 安全主義:安全を求め慎重に行動、忠実、責任を取る、情け深い、実際的、防衛的
タイプ7 楽観主義:楽しさを求めて計画、好奇心が強い、物事に熱中、楽しいことがすき、
タイプ8 冒険主義:強さを求めて自己主張、単刀直入、気取らない、精力的、自信がある
タイプ9 平和主義:調和と平和を願う、愛想が良い、受容性に富む、偏見がない
こだわり | 動機の方向 | 思考スタイル | 行動スタイル | マネジメント資質 |
---|---|---|---|---|
完璧主義 | 質の探求 | 掘り下げ探求する 効率性よりも可能性を優先 | 手段にこだわる 自説を曲げない | 向上心は高い 執着性は高い 変化適応性は低い |
他愛主義 | 他人を助けることで自分の居場所を実感する | アイデアは豊富 感性や直感優先 論理性は弱め | 努力を厭わない 周囲を盛り上げる 他人に配慮する | 献身性は高い 優しいが見返りを求める |
結果主義 | 結果を出す 成功する | 成果までの最短距離を考える 早くて浅い | 柔軟 手段にこだわらない | 行動性は高い 変化適応性は高い 誠実性は低い |
独自主義 | 存在感の発揮 人と違う自分を演出 | 独自性は高い アイデアは豊富 感性や直感優先 | 自己本位 自分を演出する 自分への批判回避 | 向上心は高い 献身性は低い ストレスに弱い |
正解主義 | 正しい道を歩む | 事実に則して考える、論理的 アイデアは過少 | 慎重、冒険しない 人への関心は薄い | 執着性は高い 挑戦心は低い 献身性は低い |
安全主義 | ミスをしない 周囲から好かれる | リスクを排除する計画的、緻密な思考 | 謙虚、冒険しない 人への関心は高い | 誠実性は高い 献身性も高い 挑戦心は低い |
楽観主義 | 楽しいことをやる | 論理性は低い アイデアは豊富 プラス思考 | 能動的だが、リスクや困難は避ける 飽きっぽい | 変化適応性は高い ストレスに強い 執着性は低い |
冒険主義 | 人ができないことをやる | 論理よりも直感 今よりも未来を見ている | やや攻撃的でリスクを恐れない | 挑戦心は高い 行動性は高い 誠実性は低い |
平和主義 | まわりが平穏であることを好む | 論理構築は弱めであるが、細かなことによく気付く | 自分の感情や衝動を押さえ、まわりに合わせていく | 挑戦心は低い ストレスに強い 受容性は高い |
では、ここからは、タイプによる能力の特性や改善点について述べていきたいと思います。
タイプ別、能力の特性や改善点
完璧主義
- 目指すもの:自分の仕事の成果を最大限に高めること
- こだわり:仕事の完璧さ、自己納得したうえで仕事を進めること
- エネルギー:大
完璧主義の人は、「完璧さ」を求めて仕事にコミットメントしていきます。より質の高い成果を得るために時間をいくらでもかけていきます。心の中では、「もっと」「さらに」を自分に問いかけ、「徹底的に行う」「徹底的に考える」ことが習慣づけられています。反面、質の高い成果を導くものの、時間がかかる、変化に弱い、出足が遅い、といった負の面を持ち合わせています。
思考パターン
一つひとつ丁寧に情報をインプットしていきます。大掴みすることはあまり得意ではありません。読書は時間がかかり、多くの場所にラインマーカーが引かれます。思考展開は、あらゆる方向からアプローチを行い、深く、深く考えます。様々な可能性を追求したり、真相を徹底的に探究したりします。意思決定はじっくり考える分、やや遅くなります。
対人交流パターン
広く浅く付き合うことを良しとせず、「狭く濃密に付き合う」交流となります。世間話よりも、一つのテーマについてじっくりと議論をすることを好みます。グループ討議では、周囲の意見を吟味したうえで「鋭い効果的な発言」を繰り出します。しかし、発言のタイミングは遅く、テンポの速い議論ではついていけなくなります。自分の意見には自信を持ち、簡単には曲げません。対人交流では、柔軟性や寛容性に乏しくなりがちです。
完璧主義の人の自己変容のテーマは、時間がかかる、変化に弱い、出足が遅い、といった負の面を克服し、「徹底的に行う」「徹底的に考える」といった強みを徹底的に活かすことにあると思います。私は、完璧主義の人にこう提言します。
- 1回で、1人で、いきなり完璧なものを作ろうとする姿勢を改めましょう。
まずは肩の力を抜き、60点のものを出し、そこから100点へと引き上げよう。
まずは、60点の発言を行い、みんなの力で100点へと引き上げよう。 - 以下のテーマをもって自己変容していこう
「人の力を活かしながら完璧を目指すこと」
「一つひとつ100点を目指すのでなく、複数のタスクを並行して進めながら、最後にすべて100点を目指すこと」
次回に向けて
今回は、人のタイプ分けの考え方について、エニアグラムについて、完璧主義タイプの人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行いました。次回は、引き続き他のタイプの人の能力特性と自己変容のテーマについての解説を行っていく予定です。