今回は、アセッサー養成講座の「能力開発編」第2回となります。まず、ヒューマンアセスメントを実施して自己理解を深めたにもかかわらず、能力開発がなかなかうまくいかないのはなぜなのか、その原因について解説を行います。また、階層型の組織、成果主義の組織の問題点について解説を行っていきます。
能力開発は8割の人がうまくいっていない
能力開発は、単なる「スキルアップ」ではなく、「マインドチェンジ」「スタイルチェンジ」が伴うレベルのものを言います。言ってみれば、「自分を変える」ということを実践することを言います。しかし、アセスメントを実施し、せっかく自己内省を行い、自己理解を深めても、「能力開発」すなわち「自己変容」までいっている人は僅かです。
せっかく自己理解を行ったにもかかわらず、自己啓発に繋がらない理由は以下の通りです。
- 自己啓発への動機が高まらない
- 自己啓発の方法が掴めていない
- 自己啓発の支援者がいない
自己啓発への動機が高まらない
まず、「自己啓発への動機が高まらない」ということに関してですが、多くの人は「今の仕事を円滑に進めるための勉強」くらいしかやっていません。
- 社会人として目指すものがない、キャリアへの意識不足
- 能力開発を行うことは「重要」だと理解していても、目下の成果をあげることが「緊急」であるため
- そもそも能力開発の重要性をあまりに認識していない
危機感も夢もないため? - もっとも大きなものは「自己啓発をしなくても成果を上げていればきちんとした処遇が得られる」環境にいること
つまり「自己啓発をしなくてもペナルティや不利益がない」という理由でしょう。
自己啓発の方法が掴めていない
次に、「自己啓発の方法が掴めていない」ということに関してですが、「スキルアップ」でなく、「スタイルチェンジ」「マインドチェンジ」の方法が掴めていないということです。「スキルアップ」に関しては、本を読めばわかります。だれでも共通したやり方があります。しかし、「スタイルチェンジ」「マインドチェンジ」となると、一人ひとりやり方が異なります。
「何をこう変える」といった明確なポイント、「こういうことを実践して習慣づけを行う」といった日々実践する行動が明確になっていなければ、「精神論」となってしまいます。一般論でもダメ、精神論でもダメ、自分に見合った「唯一の方法」を探す出すことが大変なのです。「方法論」が正しくなければ、自己変容は到底できません。
自己啓発の支援者がいない
最後に、「自己啓発の支援者がいない」ということに関してですが、「自己変容の場を与えてくれる人」「適宜フィードバックをしてくれる人」が不可欠です。「リーダーシップを発揮する」「ビジョンを描く」「部下を育成する」という場がなければ、そういった能力は育ちません。したがって、自己啓発は本人の努力もさることながら、上司の協力・支援も重要です。上司のサポートがあれば、よりスムーズに自己変容が進みます。
階層型の組織、成果主義の組織はリーダーを育てるのであろうか
階層型の組織の特徴は、以下の通りです。
- 一人ひとりの職掌や職権が明確に規定されている
- 権限は上位者に集中していく
- 何よりも成果を上げることが大事である
そうすると、階層型の組織、成果主義の組織はリーダーを育てることができない、というのが答えになります。リーダーの特徴をあげてみると、以下の通りです。
- 理想を追求するため、職掌や職権を超えて行動する
- 権限がなくても、周囲や上司に訴求して「承認」「賛同」をもらって行動する
- 短期的な成果が追わず、新たなビジネスの創造、組織の抜本改革を優先する
階層型の組織の特徴とリーダーの特徴を比べると、正反対となります。つまり、階層型組織とは、権限を持つ者が仕事をやりやすくする組織といえます。権限を持たない者が、余計なことをしないよう、自由を奪った組織といえます。
我々は、まず、階層型の組織、成果主義の組織では「組織は上手く機能するが、リーダーは育たない」ということを肝に銘じて、育成方法を考えないといけません。
階層型の組織、成果主義の組織のもとでは、人の能力は退化していく
階層型組織において、階層が上に上がるにつれて以下のことが生じてきます。
- 専門知識や経験知が増大する
- 人を使う権限が増大する
- 人脈が広がってくる
そうなると、人は以下のことをし始めます。
- 一から考えずに、経験や知識の中から答えを探す
- わからない場合に、自分で考えるよりも「人に聞く、人に考えさせる、人に任す」ことをする
- 納得を得よう、共鳴してもらおうとは考えず、「権限」で人を動かしていきまます
階層型組織だから「権限」がある、成果主義組織だから「結果」「スピード」が求められる。だから、じっくり考えない、個性や異論を尊重しない、という行動が助長されます。その結果、8?9割の人は能力が退化しますが、1?2割の人はさらに伸びていきます。そういった人は、階層型組織のおいしいところを享受できなかった人だと思われます。権限がない、経験がない、人が動かない、先が見えない、情報がない、といった非常に厳しい中でマネジメントを実践してきた人だと思います。
まとめると、階層が上がってもリーダーシップは育ちません。「逆境」「修羅場」を経験し、独力で跳ね除けてきた者こそがリーダーシップを取得することが出来ます。
次回に向けて
今回は、能力開発がなかなかうまくいかない原因と階層型の組織、成果主義の組織の問題点について解説を行いました。次回は、自己変容の具体例について紹介していきたいと思います。