アセッサー養成講座の「面談演習編」第3回となります。
今回は、ヒューマンアセスメントで実施される面談演習を通じて能力を評価する際のまとめと、面談演習後のフィードバックについて解説を行っていきます。

面談演習を通じた能力評価に関するまとめ

「ロールプレイ方式の面談」と「インタビュー方式の面談」

人の特性を見極め、所定の能力を評価するために日常的に使っている演習は、「ロールプレイ方式の面談」と「インタビュー方式の面談」があります。「インタビュー方式の面談」は自分のことを語る面談、能力があることを「証明する」面談とも言えます。一方、「ロールプレイ方式の面談」はその状況、その役になり切って、その場で能力を発揮してもらう面談です。

ロールプレイ方式の面談

受講者は「理想的な上司」を演じようとします。そのため、アセッサーは普段はどういった行動をしているか、どういったことが習慣として定着しているか、を見極めていく必要があります。そのために行うことは「受講者を余裕のない状況に追い込む」「STARのS(状況)を次々と変えていくこと」です。

インタビュー方式の面談

受講者を一堂に集めて様々な演習を行うアセスメントにおいては、「ロールプレイ方式の面談」を実施すること可能ですが、そうでない時は「ロールプレイ方式の面談」を行うことは困難です。実際、人材の採用、人材の紹介などで行う、「人の特性や能力を見極める面談」では、「インタビュー方式の面談」が行われています。

「インタビュー方式の面談」は、「何を聞くか」がポイントになります。どういう特性を持っているのか、どんな強みがあるのか、あるいはどこに弱みがあるのか、を知るために「質問」を慎重に吟味する必要があります。100%本音を曝け出す人はいません。バリアを張って何を聞いても、一般論、抽象論しか答えない受講者もいます。特性を掴むまで「踏み込んだ質問」「逃がさない質問」重ね、相手の特性が表れるまで追い詰めていく必要があります。

面談演習後のフィードバックについて

「ロールプレイ方式の面談」のフィードバックの進め方、留意点を解説していきます。なお、「インタビュー方式の面談」については、ヒューマンアセスメントで採用されないことが多く、フィードバックが行われないことがほとんどであるため、「ロールプレイ方式の面談」のフィードバックに絞って解説を行います。

「ロールプレイ方式の面談」のVTRフィードバックの進め方

ヒューマンアセスメントでは、グループ討議と同様、演習が終わったら演習を振り返り、自分の特性(長所・短所)に気づき、所定の能力の自己評価まで行います。自分で気づいたほうが「自己啓発」には有効です。「〇〇が足りないとつくづく思った」「人と比べてまったくできていなかった」という気付きを引き出すこともアセッサーの重要な仕事です。しかし、VTRを見せれば、「気づいてくれる」というわけではありません。アセッサーが考えるべきことは、

  1. 個々人に何を気づかせるか
  2. どの場面を見せるか
  3. どういった質問で引き出すか

ということです。実は、面談演習のVTR振り返りの準備は、ロールプレイの最中から始まっているのです。アセッサーは、部下役を演じながら、「この人にここを気づいてもらおう」と思った点について言葉に出してVTRに残しておき、(アセッサーからの指摘でなく)部下の言動から気づいてもらう形を取ります。
(例)「話が通じない上司だなあ」 などと独り言を言う場面をVTRに残しておく。
VTR振り返りは以下のように進めていきます。60分から80分程度で行います。

まず、面談状況を確認する

上司と部下の立場、考え方の違い、面談の目的などを思い出してもらいます。見るポイントを指摘してからVTRを見てもらいます。例としては、下記のようなものです。

  • 「部下の立場から見てどんな上司に映ったかを感じてください」
  • 「相手の気持ちをどれだけ受け止めているかチェックしてください」

本人の気づき・感想と周りのメンバーの感想を求める

面談目的を確認したあとVTRを見てもらい、
⇒本人の気づきや感想を引き出す
⇒メンバーからの感想を引き出す
⇒各人の気づきや感想をアセッサーが整理してまとめる
⇒これを人数分繰り返します

全員のVTRの観察が終わったら、アセッサーはまとめを行う

全員に共通していた「行動の癖」の指摘を行います。
理想の上司であればどう行動すべきであったかの共有も行います。

受講者各自で自己評価を行う

対人能力を中心に受講者各自で自己評価を行ってもらいます。

「ロールプレイ方式の面談」のVTRフィードバックの留意点

「ロールプレイ方式の面談」のVTRフィードバックを成功させるポイントは以下です。

部下の立場や感情・希望を十分に理解したうえでVTRを見てもらう

「ああ言えばよかった」「態度が弱かった」のように、説得を行う上司の立場だけからの気づきとなってしまわないよう、部下の立場や感情・希望を十分に理解してもらったうえでの感想を引き出すことが重要です。

「共感する」「傾聴する」「受容する」「支援する」の難しさを知る

受講者は、表面上「共感する」「傾聴する」「受容する」「支援する」ことを演じています。しかし、これが表面上であり、心底からの行為ではないこと、相手からはそれが見え透いていることに気づいてもらうことが重要です。「共感する」「傾聴する」「受容する」「支援する」ことはどういうことか、真剣に考えてもらいたいと思っています。

態度の変化に気づいてもらう

言語以外の態度がどう変わったか、またそういった態度は相手にどういう影響を与えるかを考えてもらいます。例としては、下記のようなものです。

  • 目が泳ぐ
  • 相手から目線を外し、左上を見た
  • 声のトーンが変わった
  • 書類をまとめて机の上でトントン叩きながら揃えだした

その時の心境を質問してみる

目に見える「発言」「態度」に意識が向きがちですが、目に見えない「心境」「意図」などを聞いてみることも重要です。何を感じていたか?何をやりたかったのか?これらを引き出すことで個人特性が明確になってきます。

最も意識の高い受講者を味方につける

グループ討議同様、もっとも「向上心がありそうだ」「気づきが深そうだ」という者に注目し、皆が気づかなかったら、その者に話を振って「気づき」「反省点」を引き出します。講師が言うよりも、受講者同士で指摘し合った方が数倍効果があります

部下指導のスタイル

おわりに

今回で、アセッサー養成講座の「面談演習編」が終了となります。次回は、ヒューマンアセスメントで思考面を評価する際に最も活用される「インバスケット演習編」を執筆予定です。アセッサー養成講座へのご意見・ご感想、また、アセッサー養成に関するお問い合わせなどありましたら、お問い合わせフォームより是非ご連絡ください。