階層型組織における問題
私が、20年以上ヒューマン・アセスメントを行っていて確実に言えることは、年齢が高くなっても、勤続年数が長くなっても、職位が高くなっても、リーダーシップ能力やマネジメント能力が高くならないということです。大体、どの会社でも以下のような傾向が表れています。
年を取るほど、職位が上に上がるほど、思考や行動の「柔軟性」がなくなる。経験則に依存するようになり、思考や行動がパターン化してしまう。
原因の一つとして、階層型組織の問題があります。階層型組織は、権限が集中しており、職責や職位が明確に規定されています。そのため、出来上がったビジネスを効率的に動かすときには有効に機能します。しかし、変革が必要な時はマイナスに作用します。権限や職責を超えて行動することは、ルールに逆らうことになるからです。階層型組織では、大変革の状況に直面しても、自分の権限と職責の範疇で最適な行動を模索するだけとなってしまいます。
階層型組織では、年長者や上位者ほど変革能力が高まっているかといえば、そうとは言えません。部長や事業部長は、業績への責任が重く、なかなか冒険できません。経験と知識は豊富であり、そこからすぐに答えを出すことができ、答えが出せない課題は下位者にやらせる権限があります。
階層型組織における上位者は「結果が求められること」「経験則が働くこと」「人にやらせる権限を持っていること」から、「リスクを避け、自分の頭で考える」ことをしなくなってしまうのです。
そのため、専門知識や仕事に密着した能力は高まりますが、その他の能力、特にリーダーシップに関わる能力は高まりません。
企業の人事部は、「階層型組織」「考えない部長」をそのままにし、若手にリーダーシップ能力を高めようと教育していますが、それは構造的に無理だと思います。リーダーを育てるには、部長層を一新すること、階層型組織を廃止してトップ直結の組織にすることが必要と思います。
理想の社会について
いくら良い人材を採用しても、「年功序列」「階層型組織」「権限集中」「短期的成果優先」「調和型/協調型組織」では人は育たず、組織力も高まりません。このような状況下で、「65歳定年」「70歳定年」を導入しても、使えない人がずっと残ることになるため、組織は弱体化するだけだと思います。
企業は「代謝」の仕組みを確立すべきと思っています。東大柳川教授が言う「40歳定年制」に大賛成です。40歳になると「正社員」でなく、自営業者となって「請負」形態で働く。そうすると、「請負」として稼げるよう、社員は40歳まで一生懸命勉強するでしょう。また、前の会社から業務を請け負いながら、別の専門分野を開拓したり、新たスキルを身に着けたり、新たな受注先からも仕事をもらえるように自分磨きを行うでしょう。「競争意識」「危機意識」が高まることで、個々人も持ちうる力を存分に発揮しながら活躍の場を広げることができるでしょう。